「書く」ことについて
今週から、本格的に授業が始まりました。
WINGは、公立学校と同じように、教科書を使った授業があります。
今回は、小学56年生の国語の様子をご紹介いたします。
56年生の国語では、「書く」ことに力を入れています。
昨年度も、1年間でとても成長しました。
例えば、Aさん。
4月の時点では、こんな文章でした。
「だいじょうぶ だいじょうぶ」で作者はなにをつたえたかったか。
わたしは、できなくても、ぜったいのりこえられるからだとかんがえる。
第一に、できなくてもできても、ぜったいのりこえられるとゆっているカラダ。
だい二に、だれかにたよって、いいんだよ、といっているカラダ。
だい三にむりしてともだちをつくラナクテモイインだよ。
だい四に、じぶんもおじいちゃんにこうゆうことばをいわれたから。
だい五は…(後略)
とても頑張っていますが、謎にカタカナまじりの部分があり、読みにくいですね(笑)
そのAさんの半年後の文章がこちらです。
「まりがうちにきた日」
私はずっと猫をかいたくて、いつもママにおねがいをしていた。
ある日ママが「かっていいよ」ときょかをくれた。
そして、「ペットのおうち」という、ネットのサイトで、里親募集のページをひらいたら、里親をさがしている猫たちの写真がいっぱいあった。
少し悲しくなった。
なぜかというと、親のいない子がいっぱいいたらかだ。
たくさんの写真の中に、仔猫のくろ猫がいた。
くろ猫は、何匹かいたけど仔猫のくろ猫は1匹しかいなかったから、ママに「この子にする!」と言った。
そして、くろ猫を、保護している人にれんらくをしたら「ごめんなさい。くろ猫の後ろにいる子です。」と言われた。
正直まちがえてはずかしかった。…(後略)
こうやってみると、半年の間にかなり文章が上達したことがわかります。
「まり」という猫を飼ったときのエピソードがわかりやすく、そして気持ちが伝わるように書かれています。
漢字も増えて読みやすくなった上に、文章がかなりしっかりしてきました。
子どもたちにこの文章を紹介すると、「すごい成長した!」とみんなびっくりしていました。
当のAさんはというと、改めて自分の昔の文章を見て、「私の文章ってこんなだったんだ」と、恥ずかしそうに笑っていました。
続いて、Bさん。
4月の文章はこちら。
「ドイツの長いソーセージ」
5~6才のころ、ぼくはドイツにいった。
ドイツにはぼくと弟とおかあさんとおとうさんといった。
ドイツにきて2日ごぼくは目がさめた。
するとまだ日本じかん6時30分ごろだった。
まだあさはやいからまたねた。
そしたらおとうさんがおこしてくれた。
するとおとうさんとおかあさんがおきていた。
それからホテルのあさごはんをたべてそとにあそびにいった。
それでホテルにかえると…(後略)
Bさんの文章は標準的で、特に悪いというわけではありませんが、出来事が時系列にならんでいて、ベタっとした印象になっています。
そんなBさんの9月の文章がこちらです。
「4人目ができる話」
「え、ぼくに4人目ができた!」
ぼくはびっくりしておかあさんにきいた。
ぼくは3人兄弟の長男だ。
ぼくは今10さいで5年生、ぼくの弟は7さいで2年生、妹は1さい6ヵ月だ。
ぼくは4人目ができるなんて考えもしなかった。
「そう、4人目ができるの!」
ぼくはとてもたのしみだった。
なぜなら、あかちゃんはとてもかわいいからだ。
それから夏休みにはいった。
夏休みはまいかいいくホテルにもいけなかったけど4人目ができるからがまんした。
4人目がうまれたらみんなでどこかへいきたいです。
たとえばみんなで海にいきたいなと思う。
4人目がうまれることを考えると楽しみだ。
自分に兄弟ができたときのことを、イキイキと書いてくれています。
文章の入りも工夫されていて、読みたくなるような入りとなっています。
もちろん、改善の余地はまだまだありますが、半年でこんなに成長してくれたことがとても嬉しいです。
これも子どもたちは「すげー!」と感心していました。
さて、そんな56年クラスで、2年間学習し、この春に中学生になったCさんが、自作の物語を見せてくれました。
それがこちらです。
「20XX年からの手紙」
第一章
三重県は、 5月に35度の真夏日を8日間連続で更新した。小野寺は、首にべったりついた汗を緑色のハンカチで拭いながら、言った。
「異常気象も続けば異常じゃないな」
小野寺は、動いていない自動販売機の横のゴミ箱をどけてしゃがみ込んだ。
「このヒビはこの前の東海大地震の時のか?」そう言うと立ち上がり、ゴミ箱を戻した。
「号外~‼︎号外~‼︎」と言う声が街中に響く。100人ほどが集まっている。
それを小野寺は、かき分けようやく、一枚を手に取った。
そこには、『A国、ついにサウジアラビアに軍事侵攻開始!』と言う見出しがのっていた。
世界がエネルギー危機に陥った時から、A国はサウジアラビアを狙っていた。
そして2ヶ月の間にアラル、サカーカを占領した。侵攻開始から、7ヶ月でカフジ、ジェバイル、そして首都リヤドを占領し、サウジアラビア降伏。
サウジアラビアの油田はすべてA国・サウジアラビア連合管理油田となった。
しかしそれは名前だけと言うことは各国が気づいていた...
この文章を読んだとき、本当におどろきました。
とても価値のある文章です。
まず、最初の一文が小松左京の『日本沈没』からもってきたものです。
Cさんに「小松左京すきなの?」と聞くと、「うん」と答えましたので、小松左京好きとして一盛り上がりしました(笑)
また、この文章を書く上で、世界地図をとても熱心に見て、「もしサウジアラビアで戦争が起こった場合は、どうやって攻めていくんだろう?」と考えながら書いたそうで、それもすばらしいことです。
奇しくも、小松左京氏が『エスパイ』(だったと思いますが)を書く際に、舞台となる国に行けなかったので、世界地図を見ながら物語をつくったという話が思い出されて、「やるなあ~」と話しました。
しかも、その国の政治体制もとても調べたらしく、「三権分立に詳しくなった!」と話してくれました。
これも、まさに「SFは総合知」だということを体現していて、高度な学習をしていると感心しました。
そして、何より文章がうまい。
特に、最初の3文のすばらしさを子どもたちに解説すると、「すごすぎる…」と感嘆していました。
文章をこうして楽しんでくれているのが、とてもうれしく、影響を受けた子どもたちが、またすばらしい文章を書いてくれることでしょう。
「文章は書かなければいけない」のではなく、楽しみながら書く中で、自分の考えを整理したり、言葉を見つけていってほしいと、改めて思いました。
また今年も、どんな成長が見られるのかとても楽しみです。
(文責 スミス)